大阪高等裁判所 昭和59年(行コ)51号 判決 1985年6月18日
京都市中京区西ノ京笠殿町七番地二
控訴人
斉藤秀子
右訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都市中京区柳馬場二条下ル
被控訴人
中京税務署長
前田輝郎
右指定代理人
長野益三
同
杉山幸雄
同
清水文雄
同
河中恒雄
同
工藤敦久
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一、申立
一、控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和五五年一一月一七日付けでした控訴人に対する所得税更正処分のうち、事業所得金額が昭和五二年分は九〇万四、〇〇〇円、昭和五三年分は一〇五万八、〇〇〇円、昭和五四年分は一一二万二、〇〇〇円をそれぞれ超える部分及びこれに対応する過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二、被控訴人
主文同旨
第二、主張及び証拠
当事者双方の主張及び証拠の関係は、以下に付加するほかは、原判決の事実摘示と同じであるからこれを引用する。
当審における控訴人の主張
1 控訴人の営業は、単に酒類を販売するだけでなく、飲酒、接待(雰囲気)という行為によって売上金額が定まるのであるから、売上原価と売上金額とは対応関係がないのに、これが対応するものとして同業者の差益率を算出し、これを控訴人の売上原価に適用するのは誤りである。
2 同業者A、B、Eについては、本件係争年分中次のとおり税理士支払報酬額がある。
同業者 昭和五二年 昭和五三年 昭和五四年
A 三〇八、〇〇〇円 三〇八、〇〇〇円 三七八、〇〇〇円
B 九〇、〇〇〇円 九〇、〇〇〇円 九〇、〇〇〇円
E 二一〇、〇〇〇円 二三〇、〇〇〇円 二四五、〇〇〇円
原判決は、税理士報酬額を特別経費とみなしてこれを除外して同業者の一般経費を算出しているが、税理士報酬額は一般経費であるからこれを加算して一般経費を算出し、右三名の所得率を計算し直した同業者の算出所得率を控訴人に適用すべきである。
理由
当裁判所も控訴人の請求は失当として棄却すべきものと判断するものであって、その理由は次に付加するほか、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。
1 差益率の適用について
被控訴人が選出した同業者は、いずれも控訴人と同じくスナックを営むものばかりであり、その営業形態として酒類の販売のほか飲酒、接待という雰囲気的要素が含まれることは当然前提とされているところである。したがってこれらの同業者による平均売上原価率によって推計することは不合理ではない。
2 税理士報酬について
前示乙二号証の二ないし七、一四ないし一六によると、同業者A、B、Eについて控訴人主張どおりの税理士報酬額が認められるけれども、税理士報酬は通常の取引によって発生する経費ではないから売上金額に対応するものとはいえず、これを同業者率によって推計することは合理的でないと考える。
3 その他、控訴人が当審で主張するところを検討し、本件審理にあらわれた全証拠を参酌しても、前記のとおり付加したうえ引用する原判決の事実認定及び判断を動かすことはできない。
よって、右と同旨の原判決は相当であり、その取消を求める本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥輝雄 裁判官 野田殷稔 裁判官 井筒宏成)